今回は『理学療法士長尾が考えるこれだけはやってほしいこと【その6】』として、『ゆっくり歩き(スローウォーク)』について話したいと思います。
「速歩きをすることで健康維持・改善を行いましょう」と早歩きを勧めるTV番組を見ることがあります。
実際に速く歩くことで健康寿命が長くなるという研究発表もされており、速歩きをすることで、筋力の増強効果や血糖値の上昇を防ぐ効果、免疫力の向上といった効果があるといわれています。
しかし、リハビリを行っていると運動機能が低下している患者さんでは速く歩くことで転倒のリスクがある方や速歩きを行う事で膝関節や腰に痛みが起こってしまう方が多くおられます。
このような患者さんには「速歩き」ではなく『ゆっくり歩き』を行うように指導しています。
前回のブログでもお話ししましたが、ゆっくり歩くと左右にふらつきやすいと思います。これは歩くスピードが遅いことで前方に進む推進力が小さくなり左右にふらつきやすくなるということです。つまり、ゆっくり歩くことは速くあることよりふらつきやすく難しいという事です。
「あれ?ゆっくり歩く方がふらつきやすいなら、速歩きの方が良いのでは!?」と思われたと思います。
この難しいゆっくり歩きをするためには、体幹と両足の筋力(特に体幹!!)とバランス能力が重要となります。
⇒ゆっくり歩くことで筋力トレーニングとバランストレーニングを行う事が出来るという事です!!
日常的に速歩きを行っている方も、ゆっくり歩きを行ってみてください。思ったよりも難しく感じると思います。
その他にも、ゆっくり歩きの利点は「速歩き」を行うためにはある程度歩くための距離が必要になると思いますが、『ゆっくり歩き』では歩行距離が短くても実施することが出来ます!!
ということは…『ゆっくり歩き』は自宅の中で行う事ができるという事です!!
実際に、僕は患者さんにトイレに行くときなどにゆっくり歩きを行うように指導しています。皆さんも実際にゆっくり歩きをやってみると左右にふらつきやすいと思います。
このときに、できるだけ体がふらつかないように意識して歩くことで姿勢を保持するための筋肉(姿勢保持筋)が働きます。また、ふらつかないようにバランスをとりながら歩くことでバランス練習にもなります。
『ゆっくり歩き』のポイント
①良い姿勢を意識して背中が丸まらないように注意して下さい。
②ゆっくり歩くことでふらつく可能性があります。始めはふらつかない程度のスピードで行って下さい。
③ゆっくり歩きが慣れるまでは、自分が心地よいと思うスピードから少しだけゆっくり歩いてください。少しでもゆっくり歩くことで推進力が少なくなるため、体幹・殿部の筋力でふらつきを抑えようと力が入り筋力の増強になります。
『ゆっくり歩き』の注意点
①ふらつきやすい歩き方になりますので、無理せず行って下さい。慣れるまではふらついた時に手すりが持てる場所で行って下さい。
②屋外で行うときは転倒に注意して、不整地では行わないようにしてください。
前回の【その5】でも記載しましたが、日常生活の中で少し意識することで運動を行う事はできます。
元気に歩き続けるために、日々の生活に運動を習慣づけていきましょう!!